毛無峠(ケナシ峠)とは?
長野県上高井郡高山村と群馬県吾妻郡嬬恋村の県境にそびえる毛無峠(けなしとうげ)は、標高1,823メートルの“天空の秘境”と呼ばれる峠です。
中央分水界上に位置し、かつて硫黄鉱山として栄えた歴史を今に伝える荒涼とした大地が広がります。木々がほとんど生い茂らない荒涼とした風景は、その名のとおり「毛が無い」かのような不思議な趣があり、登頂を果たした者だけが味わえる特別な静寂と開放感を与えてくれます。
かつてこの地で採掘された硫黄を長野県側へ運ぶために設置された索道(ロープウェイ)の鉄塔遺構が、峠のあちこちに姿を残しています。朽ちた金属のシルエットが、荒涼とした大地にぽつんと立つ様は、人の営みの儚さと自然の雄大さが交錯するまさに“天空のゴーストタウン”と呼ぶにふさわしい風景です。
毛無峠からの絶景
早朝や夕暮れ時、標高1,800メートル前後に漂う雲海が眼下に広がり、その向こうに北アルプスや浅間山が雄大に連なる光景は圧巻です。刻一刻と色を変える空と雲の表情に、思わず息を呑むでしょう。澄んだ空気と静寂が一層景色を際立たせ、ここでしか味わえない非日常感を体験できます。
西側にそびえる破風岳(標高1,999m)は、日没前の柔らかな橙色の光でシルエットが浮かび上がり、まるで墨絵のような風情を醸し出します。天候に恵まれれば、稜線に夕陽が差し込む瞬間に空全体が黄金色に染まり、心の底から感動が湧き上がってくるはずです。
アクセス方法・駐車場情報
長野市方面から向かう場合は、国道292号(志賀草津道路)を経て県道466号(上信スカイライン)へ入り、万座峠を越えた後に分岐する県道112号線を南下します。
群馬県側は立ち入り禁止の看板が立つため、長野県側からの往復のみ可能です。峠へ続く林道は冬季閉鎖(例年11月末〜4月下旬)となるため、訪問は5月〜11月が目安です。
峠の広場には10台ほどが駐車可能なスペースがあり、車中泊を楽しむ人もいます。
ただしトイレや売店などの設備は一切ないため、水分や食料、懐中電灯などをあらかじめしっかり準備して訪れましょう。また、夜間や早朝は気温が急激に下がることがあるため、防寒対策も忘れずに。
周辺のハイキングコース
毛無峠は、破風岳(はっぷだけ)や御飯岳(ごはんだけ)への登山口としても人気です。峠のすぐ脇から続く山道はやや急勾配ですが、所々に視界が開ける展望スポットが点在し、峠での絶景とはまた違った角度から山々を楽しめます。初級〜中級者向けのコースタイムは往復3〜4時間程度です。
森の中を抜けた先には草原地帯が広がり、高山植物が咲き誇る7月〜8月の季節はまるで別世界。足元にはリンドウやハクサンイチゲなどの可憐な花々が顔をのぞかせ、風に揺れる草の音に心まで癒されます。
ベストシーズン&注意点
9月中旬〜10月上旬には、峠周辺のダケカンバやナナカマドが色づき、紅葉狩りにも最適です。朝晩の寒暖差が大きいため、凛とした空気の中で深まる秋の彩りを満喫できます。一方、道路凍結や落石の危険もあるため、天候情報を事前に確認し、スタッドレスタイヤや携帯用スコップを準備しておきましょう。
霧に包まれる早朝は幻想的ですが視界が悪くなるため、無理に峠の端へ近づかないよう注意してください。また携帯電話の電波が不安定になる場所もあるため、グループで訪れる際は互いの位置をしっかり確認し、安全第一で絶景ドライブをお楽しみください。
毛無峠の駐車場は?
周囲に無料で停められます。
毛無峠の場所
駐車場